「あきらめよう」は実はポジティブな言葉

比較・競争といった呪縛から抜け出すためには、「自己肯定感」が関係しています。

 自己肯定感とは?

「うらやましい」を嫉妬に変えてしまうネガティブ感情には、さまざまな種類がありますが、とくに影響力の強い存在だと感じているのが、「自己肯定感」です。

 嫉妬してしまう背景には、自信のなさや自己肯定感の低さがあり、そこから無価値感や無力感などのネガティブな感情を引き起こしています。

 もし、あなたが自分に自信を持てたとしたら、嫉妬してしまうような状況に出会っても、これまでとはまったく違う感じ方ができるかもしれません。

 たとえば、あなたが自分の仕事に自信や誇りを持っていて、与えられた業務を一つひとつ丁寧にこなしているという自覚があるならば、同僚の成功を耳にしたときに、嫉妬ではなく「あの人は優秀だし、とても頑張っていたし、成功するのは当然だ」と素直に認め、賞賛することができます。

さらに「今度は自分の番だ!もっと頑張ろう!」と、同僚の成功を励みにすることができます。

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自己肯定感を高めると他人と自分の区別がハッキリする

自己肯定感が高い人は、自身の内面に「軸」が確立されているので、「自分は自分、相手は相手」という線引きがきちんとできています。

 それゆえに同僚の成功を聞いたときにも「おめでとう!よかった!」と喜ぶことができるのです。これは「同僚と自分は別々の存在である」ことをきちんと認識していると同時に、「相手が成功したことと、自分の仕事には関連性がない」と心から理解しているからです。もちろん「成功した同僚のほうが能力が上で、自分は下なのだ」という意識もありません。

 ここでは同僚の成功を例として挙げましたが、自分が嫉妬を抱きやすいポイントで、そんなふうに思えたら、とてもラクになれると思いませんか? 

 友人の結婚を素直に喜べる自分、幸せそうな家族連れを見かけて「素敵だな」と思える自分、知人がお金持ちになったことを「すごい!」と称賛できる自分、若くキラキラしている女性を見て「元気でいいよね!」と目を細められる自分――。

 まずは今の自分に自信を持ち、自己肯定感を高めていきましょう。ここからは、そのためのヒントをお伝えしていきます。

私たちは思春期以降、少なからず「完璧主義」や「理想主義」にとらわれて生きています。また無意識のうちに友人と「比較・競争」してしまうことは誰にでもあります。

 思春期は「個別化」といって、他人と自分とを区別して認識しはじめる時期でもあるのですが、それゆえに周囲と自分を比べたり、完璧になろうとしたり、理想的な自分になろうとするようになります。

 実はこの完璧主義・理想主義・比較・競争には、ある共通点があります。それは「今の自分では不完全である」という観念です。「不十分」と言い換えてもいいかもしれません。

 だから、友人や家族をはじめとする周囲の人と自分を比べて優越感に浸ったり、劣等感に苛まれたりします。完璧な人間になって、みんなから認められたいという、強い承認欲求も生まれます。周りからの期待も含めて、「理想的な自分」を描き、そうなろうとして背伸びをするのです。

 今の自分は不完全だから、もっとちゃんとしなきゃいけない。もっと完璧にならなきゃいけない。もっと可愛くならなきゃいけない。もっと勉強ができなきゃいけない。もっといい子にならなきゃいけない――。

 無意識のうちにそう思い、そんな不完全な自分を受け入れられず、自らを嫌ってばかりいたのです。

「あきらめよう!」は、自分を許すポジティブな言葉

 「なんで、あの子はあんなにも足が速いんだろう?」と、劣等感を覚えませんでしたか?  

「なんで、あの子はたくさんの友達に囲まれているんだろう?」と、うらやましくなりませんでしたか? 

 こうして私たちは、足が遅い自分を嫌っていましたし、友達が少ない自分はダメだと自己否定していたのです。

 でも、完全な人なんていない、と思いませんか? 実際、頑張って不完全な自分をちゃんとしようと努力して、たしかに成長した部分もあるけれど、相変わらず不完全な自分を感じていませんか? そして、そんな自分をまだどこかで否定していませんか? 

 私はよくカウンセリングで「あきらめましょう!」という提案をします。

実は「あきらめる」の語源は「明らかにする」という意味なのです。

 つまり、「完全になることをあきらめる」というのは「不完全な自分を明らかにする」ことであり、それは「不完全な自分を受け入れる」ことにつながります。

 言い換えれば、理想にまったく達していない自分を許すことによって、誰かと自分を「比較・競争」することを、やめるということです

どんな自分もまるっと愛せる私になろう

そうはいっても、不完全な自分をいきなり愛するのは難しいもの。

これまでずっと、理想の自分を目指して頑張ってきたのだから当然ですよね。無理せず少しずつ、意識を変化させていきましょう。そこで登場するのが、次の言葉です。

 「これが今の自分なんだから、しょうがないよね~」

 

「しょうがない」という言葉も後ろ向きで、あきらめるようなニュアンスを感じるかもしれませんが大丈夫です。だって、「今の」としていますよね? 

 ここがポイント。あくまで「今の自分は、しょうがない」のです。

 この先、自分が成長できるようなチャンスが訪れるかもしれませんし、未来の自分は「しょうがなくなくなる」ことも大いにあり得るのです。

 この言葉は、あなたが嫉妬したときにも活躍してくれます。「今の自分が、あの人に嫉妬しちゃうのはしょうがない!」

 ぜひこの言葉を覚えておいてください。その上で、不完全でぜんぜん完璧じゃなく、理想も叶えられていない自分をただ許していくのです。

 「それでいいんだよ。今の自分で大丈夫だよ。これが今の私なんだから、受け入れてあげようよ!」

 自分自身に、そう語りかけてあげましょう。

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この記事を書いた人

民間臨床心理士
妻、中3の娘、小2の息子の4人暮らし

「スタッフ」
セラピードッグ2頭、セラピーマイクロブタ2頭、セラピーラビット2羽、セラピーメダカいっぱい(笑)

関東にある自然豊かな田舎町(移住)住まい

基本自由人

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